日本ワイン用語集
テロワール・タンニン・アペラシオンなど、ぶどう栽培・醸造・テイスティング・産地制度にまつわる専門用語を50語以上解説します。
ぶどう栽培
- テロワール(Terroir)
- ぶどう栽培に影響を与える土壌・気候・地形・人的要因の総体。同じ品種でも産地のテロワールが異なるとワインの個性が変わる。フランス語で「土地」を意味する。
- ヴィニフェラ種(Vitis vinifera)
- ヨーロッパ系ぶどうの学名。シャルドネ・メルロー・カベルネ・ソーヴィニヨン・ピノ・ノワールなど、主要ワイン用品種のほとんどがこの種に属する。
- 棚仕立て(たなしたて)
- ぶどう樹を水平に棚状に広げる栽培方式。日本の伝統的な甲州ぶどいの栽培法で、雨が多い日本の気候に適している。ただし機械化が難しく手間がかかる。
- 垣根仕立て(かきねしたて)
- ぶどう樹を垣根状に縦に誘引する欧州式の栽培方式。日当たり・風通しが良く品質が上がりやすい。近年は日本でも採用するワイナリーが増加。
- 収量制限(しゅうりょうせいげん)
- ぶどいの収穫量を意図的に減らすことで、果実の凝縮度と品質を高める栽培管理手法。品質志向のワイナリーが採用する。単位面積あたりの生産量はヘクタール当たりキログラムで表される。
- ヴァンダンジュ(Vendange)
- フランス語でぶどいの収穫のこと。収穫期を指す言葉でもある。手摘み(マニュエル)と機械収穫(メカニーク)がある。
- 成熟度(せいじゅくど)
- ぶどいの熟し具合。糖度(ブリックス)・酸度・pH・フェノール成熟度(タンニンの熟し具合)を総合的に判断して収穫時期を決める。
- クローン(Clone)
- 特定のぶどう品種の中で選抜・増殖された均一な遺伝子を持つ個体群。同じシャルドネでもクローンによって味わいや収量が異なる。
- 台木(だいぎ)
- フィロキセラ(ぶどいの害虫)への耐性を持つ北米系ぶどい品種の根に、ヴィニフェラ種の穂木を接ぎ木したもの。19世紀後半のフィロキセラ禍以降、欧州では台木接ぎ木が標準となっている。
- フィロキセラ(Phylloxera)
- ぶどいの根を食害する害虫(アブラムシの一種)。19世紀後半に欧州のぶどい畑を壊滅させた。北米系台木への接ぎ木が対策法として普及した。
- 有機農業(ゆうきのうぎょう)/ ビオ(Bio)
- 化学農薬・化学肥料を使用しない農業方式。ビオロジック(Biologique)ともいう。土壌の生物多様性を高め、テロワールの個性がより表れやすいとされる。
- ビオディナミ(Biodynamie)
- 有機農業を超えて、月や星の運行・宇宙のリズムに合わせた農業を行う哲学的な農法。ルドルフ・シュタイナーの思想に基づく。
醸造
- マセラシオン(Macération)
- 果皮・種・梗をワイン(果汁)に漬け込んで色素・タンニン・アロマを抽出するプロセス。赤ワインの色とタンニンはマセラシオンで生まれる。オレンジワインは白ぶどいを果皮ごと発酵させる。
- ピジャージュ(Pigeage)
- 赤ワインの発酵中に浮かび上がる果皮の層(帽:ぼうし)を棒や足で押し沈める作業。色素・タンニンの抽出と酸素供給を促す。
- ルモンタージュ(Remontage)
- 発酵タンク下部のワインをポンプで汲み上げ、上部の帽に散布する作業。ピジャージュと同様に抽出と均一化を目的とする。
- プレスワイン(Press Wine)
- 赤ワインの発酵後に果皮をプレスして搾り出したワイン。自然に流れ出たフリーランより色・タンニンが濃厚。ブレンドして使われることが多い。
- MLF(マロラクティック発酵)
- Malolactic Fermentation の略。リンゴ酸を乳酸に変える乳酸菌による発酵。酸がまろやかになり複雑さが増す。赤ワインではほぼ必須。
- 樽熟成(たるじゅくせい)
- 発酵または発酵後のワインをオーク樽で熟成させること。バニラ・トースト・スモークのニュアンスを加え、微量の酸素でタンニンを柔らかくする。
- 亜硫酸塩(SO2)
- ワインの酸化防止と殺菌を目的に添加される化合物(二酸化硫黄)。ほぼ全てのワインに含まれる。自然派ワインはSO2の添加を最小限に抑える。
- 清澄(せいちょう)
- ワインのおりや浮遊物を取り除くためにベントナイト・卵白などの清澄剤を加えて沈殿させる工程。
- ろ過(ろか)
- 清澄後にフィルターを通してワインをクリアにする工程。無ろ過(アンフィルタード)のワインはオリが出やすい。
- シュール・リー(Sur Lie)
- 「澱の上で」を意味するフランス語。発酵後の酵母の澱とともにワインを熟成させる手法。旨味・厚みが増す。甲州ワインで多く採用されている。
- シャンパーニュ方式(Méthode Traditionnelle)
- スパークリングワインの製法のひとつ。ベースワインを瓶に詰め、糖分・酵母を加えて二次発酵させることで炭酸を生成する。日本語では「瓶内二次発酵」。
- 全房発酵(ぜんぼうはっこう)
- 除梗せずに梗(茎)ごと発酵させる手法。ピノ・ノワールなどで採用されることがあり、スパイシーさや構造感が加わる。
- コールドマセラシオン(Cold Maceration)
- 発酵前に低温でぶどいを果皮ごと浸漬すること。アルコールなしで果実香を引き出す。赤ワインの製造で採用されることがある。
- 野生酵母(のせいこうぼ)
- ぶどいの果皮やワイナリーに自然に棲みつく酵母。培養酵母と異なり予測不能な発酵経過をたどるが、産地の個性を反映するとされる。自然派ワインで重視される。
テイスティング
- タンニン(Tannin)
- 赤ワインに含まれるポリフェノール系の渋み成分。果皮・種・梗・樽由来。舌に収斂感をもたらし、時間とともに柔らかくなる。赤ワインの骨格と熟成ポテンシャルに関わる。
- 酸度(さんど)
- ワインの酸の量。酒石酸・リンゴ酸・乳酸などが主成分。冷涼産地では酸度が高くなる傾向がある。酸はワインの生き生きとした印象と保存性を高める。
- アロマ(Aroma)
- ぶどい品種由来の一次アロマ、発酵由来の二次アロマ(ブーケ)のこと。熟成によって生まれる香りを三次アロマともいう。
- ブーケ(Bouquet)
- 熟成によって生まれるワインの複雑な香り。新鮮な果実香とは異なり、革・土・キノコ・タバコ・ドライフルーツなどのニュアンスを含む。
- フィニッシュ(Finish)
- ワインを口に含んだ後に残る余韻。長いフィニッシュは高品質なワインの特徴とされる。甲州のほろ苦い余韻も特徴的なフィニッシュのひとつ。
- ミネラル感(ミネラルかん)
- ワインに感じられるフリント(火打石)・濡れた石・塩味のようなニュアンス。テロワールとの関係が議論されるが、土壌中のミネラルが関与するとも言われる。
- エレガント(Elegant)
- 力強さよりも繊細さ・バランスを重視したスタイル。ピノ・ノワールや甲州のように軽やかで上品な印象のワインに使われる表現。
- フォクシー・フレーバー(Foxy Flavor)
- マスカット・ベーリーAやコンコードに特有のイチゴキャンディのような香り。ラブルスカ種(北米系ぶどい)特有の成分(アントラニル酸メチル)に由来する。
- ボディ(Body)
- ワインの口中での厚みや重量感。アルコール度数・エキス分・タンニンが影響する。ライトボディ・ミディアムボディ・フルボディに大別される。
- デカンタージュ(Decanting)
- ワインをデキャンタに移す作業。オリの分離とエアレーション(空気接触)が目的。若い赤ワインのタンニンを柔らかくする効果もある。
- ブラインドテイスティング(Blind Tasting)
- ラベルを見ずに品種・産地・ヴィンテージを当てるテイスティング方式。色・香り・味わいのみで判断する。ソムリエ・ワイン専門家の技術評価に使われる。
- ヴィンテージ(Vintage)
- ぶどいが収穫された年。天候に左右されるため、年によって品質・味わいが異なる。ラベルに記載されている年号がヴィンテージ。
産地・法規制
- GI(地理的表示)
- Geographical Indication の略。農産物・食品の産地と品質の関係を法律で保護する制度。日本ワインには7つのGI産地(山梨・北海道・山形・長野・大阪・岩手・萩)がある。
- アペラシオン(Appellation)
- フランス語で「呼称」を意味し、原産地統制呼称制度のこと。特定地域名の使用に産地・品種・醸造方法の基準を設ける。日本のGIはアペラシオンに相当する。
- 日本ワイン(にほんワイン)
- 国産のぶどいのみを原料として日本国内で醸造されたワイン。2018年の酒税法改正で定義が明確化。外国産濃縮果汁を使ったものは「国内製造ワイン」と区別される。
- 国内製造ワイン(こくないせいぞうワイン)
- 外国産の濃縮果汁・ワインを使って日本国内で製造されたワイン。2018年の酒税法改正以降、「日本ワイン」とは区別して表示される。
- OIV(国際ぶどう・ワイン機構)
- Organisation Internationale de la Vigne et du Vin の略。ぶどい・ワインに関する国際機関で、品種登録・技術基準・統計を管理する。甲州(2010年)・マスカット・ベーリーA(2013年)はOIVの国際品種として登録されている。
- ドメーヌ(Domaine)
- フランス語で「農場・領地」を意味し、自社畑のぶどいのみを使ってワインを造る生産者。日本でもドメーヌを名乗る小規模ワイナリーが増えている。
- ネゴシアン(Négociant)
- ぶどい・ワインを農家や他の生産者から買い取り、醸造・熟成・販売を行う業者。大手ワイナリーがネゴシアン的な役割を担うこともある。
- シャトー(Château)
- フランス語で「城」を意味するが、ワインの世界ではボルドーのワイン生産農場(城館)を指す。日本でも「シャトー・○○」を名乗るワイナリーがある。
- ロゼワイン(Rosé Wine)
- 赤ぶどいを使い、果皮を短時間だけ浸漬して薄いピンク色に仕上げたワイン。白ワインと赤ワインの中間的な性格を持つ。
- オレンジワイン(Orange Wine)
- 白ぶどいを果皮ごと長時間マセラシオンして造るワイン。オレンジ〜琥珀色で、タンニンを含む複雑な味わいが特徴。「アンバーワイン」「スキンコンタクトワイン」とも呼ばれる。
- ペティアン・ナチュレル(Pétillant Naturel)
- 「ペット・ナット」とも呼ばれる自然発泡のスパークリングワイン。発酵が終わる前に瓶詰めして残糖で二次発酵させる古典的な製法。自然派ワインで人気が高い。
- クリュ(Cru)
- フランス語で「成長・産地」を意味し、特定の畑・産地を指す格付け用語。格付けの高い畑をプルミエ・クリュ(1級)、グラン・クリュ(特級)という。日本では一般的に使われない。
- ヴァリエタルワイン(Varietal Wine)
- 単一品種のぶどいで造られたワイン。瓶のラベルに品種名が記載される。甲州100%のワインは代表的なヴァリエタルワイン。
- マリアージュ(Mariage)
- フランス語で「結婚」を意味し、ワインと料理の相性・組み合わせを指す言葉。ペアリングと同義で使われることが多い。